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成人成長ホルモン分泌不全症の治療

治療方法

治療のために、不足している成長ホルモン(GH)を補います。これを成長ホルモン補充療法と呼びます。成人成長ホルモン補充療法は重症の成長ホルモン分泌不全症において認められ、健康保険で治療が受けられます。
成長ホルモン補充療法では、ヒト成長ホルモン製剤と呼ばれる注射薬をご自宅で自己注射します。必要量には個人差があるため投与量の調節が必要です。そのために主治医の指導のもとで血液検査と体調の変化に注意をしながら、治療を行います。注射方法は簡単なため、生活の一部として組み込み健康な人と同じように日常生活を送ることができます。

自己注射の方法

注射方法・時間帯

原則として、就寝前に自分で皮下注射をします。

注射部位

皮下注射できる部位は、おなか、太ももです。部位は毎日変えます。一カ所に続けて打つと皮下脂肪の萎縮や肥大をおこすことがあります(詳細は医師の指示に従ってください)。

注射部位

保存方法

冷蔵庫(2~8℃)で保存します。凍結を避け冷凍庫には入れないようにします。

投与量調節方法

成長ホルモンの投与は少量(0.003mg/体重kg/日)から開始します。体調や気になる症状の出現に注意し、血液検査でIGF-Ι値が自分の年齢・性別に合わせた基準範囲に保たれるよう量を調節していきます。1日量として1mgを超えないようにします。
血中IGF-Ι値の測定は成長ホルモン投与開始から24週目までは4週間に1回、それ以降は12週から24週に1回を目安に行ないます。それ以外にも成長ホルモンの投与による臨床的な効果(体組成の改善、代謝障害の是正、QOLの改善など)を評価します。

※IGF-Ι
(インスリン様成長因子-Ι)値とは

成長ホルモンが作用すると体のさまざまな部位でIGF-Ιが作られ、成長や代謝を促進します。成長ホルモンの分泌量とIGF-Ι値は正に比例するため、血液中のIGF-Ι値は成長ホルモン量の目安となります。血液検査でIGF-Ι値を測定することは、成長ホルモン補充療法の効果を調べるために必要です。

治療のメリット

成長ホルモン補充療法をはじめて数か月から半年以上過ぎると、体調がよくなり活力や気力がわいてくるという感想が多くなります。不足しているホルモンを少しずつ補充し、体をホルモンが不足する前の状態に戻すため時間はかかります。体脂肪が減って体が引き締まる、皮膚が乾燥しにくくなるなどの他に、目に見えないところでも動脈硬化の改善、骨を丈夫にするなど、一生を通して健康に生きるために必要な状態を維持しているのです。

治療によって身体機能や体全体の健康感が増し、生活の質(QOL)が改善します。
治療の効果

脂肪量が減少し筋肉量が増える

  • 内臓脂肪を含む脂肪が減少する
  • 筋肉量が増え、運動能力が向上する
  • 皮膚の乾燥や体毛の柔軟化が改善する

骨が丈夫になる

  • 骨の代謝が改善され、長期間続けることで骨塩量が増加する
  • 骨折のリスクが低下する

心血管系疾患の危険度が低下する

  • 心臓の機能が改善する
  • 脂質代謝が改善する
  • 動脈便化(壁の厚さや硬化度)が改善する

成長ホルモン補充療法中の気になる諸症状

成長ホルモンの補充は少量から始め、自覚症状や体の変化にあわせて調節していきます。まれに、以下のような症状が現れることもあります。これらの症状に気づいたら医師に相談しましょう。ほとんどが一時的なもので、治療を継続して行くと症状はなくなっていきます。

手根管症候群

手首の手のひら側の手根管とよばれる部位を通る神経が圧迫されて、親指、人差し指、中指がしびれたり痛んだりします。

関節痛や筋肉痛

体の関節や肉が痛みます。

手足のむくみ

手足がむくみ、指で押したへこみがすぐにもとに戻りません。

成長ホルモン補充療法中の気になる諸症状

楽しく充実した日々の暮らしを

成長ホルモン補充療法を開始してから効果が現れるまでの期間には個人差があります。一般的には数か月や半年以上かかるため、長い目で見守る必要があります。毎日の自己注射を基本にし、体を健康な状態に作り直すような気持ちで日々を過ごしましょう。体調が良ければ、できることは積極的にこなし、楽しく充実した毎日を送りましょう。
成人成長ホルモン分泌不全症の患者さんには内臓脂肪が増えるなどメタボリックシンドロームにも似た症状が現れますが、治療に加え、食事に気を付け、運動を心がけることでさらなる改善が期待できます。また、成長ホルモンの働きを高めるためにも、十分な睡眠をとるようにしてください。

成長ホルモンの働きを高めるために規則正しい生活を

運動

1日30分程度のウォーキングを。
エレベーター、自動車や自転車などに頼らず、できるだけ自分の足で歩くことを心がけましょう。

食事

規則正しく一日三食とり、栄養バランスに気をつけましょう。
外食が多い方はカロリーや食べ過ぎに気をつけましょう。

睡眠

夜更かしを避けて十分に睡眠をとり、疲れを溜めないようにしましょう。

成長ホルモンの働きを高めるために規則正しい生活を