患者さんの声
自分で注射する”治療は、
毎日の生活リズムの
一部になっています。
病院で低身長の診断を受けたきっかけは
3歳半健診
息子は、1歳児健診の時に成長曲線から外れていて、先生に「ちょっと小さいかな」、「標準の枠から外れているけど、まあ、このまま3歳ぐらいまで様子を見ましょう」と言われていました。その頃は母親である私の身長が低いから、その影響もあるのかなと思っていて、それほど心配はしていませんでした。息子は3兄弟の末っ子で一番よく食べるので、そのうち成長するだろうと思っていました。小さい息子を抱っこしながら、「末っ子だから、いつまでも抱っこされたいんでしょう?」と笑いながら話していたぐらいです。しかし、その後も息子の身長は成長曲線の標準範囲から少しずつ離れていき、3歳半健診の時に病院を受診するように勧められました。
そして、紹介いただいた専門病院で、「SGA性低身長症」という診断を受けたのが治療の始まりです。 その後、4泊5日の検査入院を経て、自宅での成長ホルモンによる自己注射の治療を開始しました。成長ホルモン治療については自分なりに調べ、小さいうちから始めて長く治療する方が、効果が大きいということを知ったため、治療を開始することに抵抗もありませんでした。
「あれ?自分でボタンを押したら
泣かない・・・」という発見
検査入院が終わって、自宅での注射による治療が始まりました。
最初の2、3日は「嫌だ、嫌だ」と泣いていました。息子の気をそらせるために、「自分で注射ボタンを押してごらん」と言って、注入器は私が持って、ボタンだけ息子に押させてみました。そうすると、今までのように泣かなかったので、この日をきっかけに息子は自分でボタンを押して注射をするようになりました。
私や主人がボタンを押していると、針が入るタイミングを自分でつかめないので、「針が入ってきた。うわ、痛い」といった感じで泣いてしまっていたのかなと思います。まだ、注入器を支える力はないので、私か主人のどちらかの膝の上に座らせ、後ろから親が注射器を支えて、息子がボタンを押すという方法で注射しています。
準備から片付けまで、自分で全部をすることで一つの流れとして習慣にする
息子は、お風呂に入る前に、冷蔵庫から注射のお薬を自分で出してきます。そして、お風呂から出たら、注入器を取ってきます。自分で注射する位置を決めて、消毒も自分でしています。以前は私か主人が少しずつずらしながら注射する位置を決めていましたが、息子にしてみると、「そこよりも、今日のこっちの方が痛くない」といった思いがあるようで、今は注射する位置も自分で決めています。
そして、注射が終わった後は、注入器を片付けるまでが息子の担当になっています。
こうして、準備から片付けまで全部をやる方がひとつの流れとして身につくように感じています。
おたのしみをプラスして、
注射を嫌な時間にしないように
痛みや注射の操作に慣れてきているとはいえ、やはり4歳の子が毎日注射を続けるのは大変なことだと思います。少しでも注射の時間が楽しくなるように、「楽しみ」をつけています。その一つは、注射したらスティック状のゼリーを1本食べることです。
息子が注射を嫌な時間と思わないようにする工夫は、長く続けていくためにも必要だと思っています。
先生に褒めてもらえるから、
病院も好きな場所
院 長 久保 俊英 先生
息子が注射をすると最初は「すごい、すごい、すごい」と褒めていたのですが、だんだん日常化して、最近では意識していないと褒めることも減ってしまっています。しかし、病院へ行くと担当の先生が、「大きくなったね。ハル君、毎日頑張ったね」と言って褒めてくれるので、息子はとても嬉しそうにしています。治療を開始する前の検査の時に注射で痛いこともあったので、最初の頃は、「病院に行きたくない」と言っていたのですが、最近では「先生がおるん?じゃ、行く!」と言うように変わってきていますので、先生は息子にとってとても大きい存在なのだと感じています。
息子が治療を続けていることが、
他の子の頑張る力に。
私も主人も、成長ホルモンの治療を受けて、息子が少しでも大きくなれるのであれば、きちんと続けていきたいと思っています。そのため、「毎日、注射してかわいそう」といった後ろ向きな気持ちはあまりありません。
息子には同級生の従兄弟がいますが、「ハルが毎日注射を頑張っているから、僕は嫌いな空手を頑張る」と言って、休まず空手を続けているという話を聞いた時は、とても嬉しかったです。そして、その話を息子にすると、息子もまた「タケが空手を頑張っとるけん、僕も注射を頑張る」と話し、成長ホルモンの治療を通じて、とても前向きな流れができていると感じています。
現在使っている注入器は持ち運びもできるので、この先、息子が成長して、外泊などが必要になった時も、治療のために何かを諦めるのではなく、治療を続けながら、やりたいことにも挑戦できるようにサポートしていきたいと思います。
そして今は、お父さんが地域の消防団で着ていた服がかっこいいから、消防士さん。
将来を夢みて治療を続ける息子をこれからも見守っていきたいと思います。